ポール・マッカートニー『エジプト・ステーション』76歳の新作が1位獲得!

2018年9月7日に発売されたポール・マッカートニーのアルバム『エジプト・ステーション』が全米チャート1位を獲得しました。全米アルバムチャートで1位となるのは1982年の『タッグ・オブ・ウォー』以来、なんと36年ぶりです。ポールは1位を獲得したことについて、次のように発言しました。

「すごくいい気分だよ。1位より高いところはないからね。すごくいい気分だ。僕たちはかなりの労力を注ぎ込んだ。僕とチームのみんな全員。凄くいいコンパクトなチームなんだ。みんなすごく頑張ってくれた。僕たちは一生懸命やった。価値のあるものを、誇れるものを作りたかったからね。だから実際に結果が出たことは素晴らしい」

アルバムジャケットとタイトルはポール自身が描いた絵が元になっています。

「実は収録しなかった曲があと10曲くらいあったけど、それも結構いい曲なんだよ。でもアルバムとしての流れが出るように曲を選んだ。『エジプト・ステーション』というタイトルを思いついた時にメイン・プロデューサーのグレッグ・カースティンに伝えたら、『いいと思いますけど、それは何のことですか?』って聞かれて、『単に絵画のタイトルだよ』って答えた。でもそれはきっと少し不思議で、少しエキゾチックな感じになると気付いて、旅のようなものという発想を膨らませてアルバムを作り始めたんだ。みんなにヘッドホンをしてじっくり聴いてもらいたいと願っている」

「僕は『エジプト・ステーション』という言葉が好きだ。僕らがかつて作っていたアルバムを思い起こさせる。『エジプト・ステーション』は1曲目の駅から出発して、それぞれの曲がまるで違う駅のようなんだ。そのアイデアがすべての曲の元になっている。それは音楽が作り出す夢のような場所だと思っている」

サビで「イチバン! イチバン!」と日本語を連呼する『バック・イン・ブラジル』、トランプ大統領を痛烈に非難した『ディスパイト・リピーティッド・ウォーニングス』などメディアも注目のアルバムで、76歳とは思えないパワフルなポールの傑作アルバムです。

ユニバーサルミュージックジャパン公式サイトにポール自身による収録曲解説が公開されているので紹介します。

1. オープニング・ステーション

「アルバムを『エジプト・ステーション』と呼ぶことに決め、だったら様々な音のモンタージュを作るのがいいと思ったんだ。どこかの駅のような雰囲気でね。そこで、2つくらいの本物の駅のSEを見つけてミックスし、さらにノイズなどを作って加え、夢の中の風景を作り出したんだ。そこが夢の場所であり、そこから音楽が発信されるという発想だ」

2. アイ・ドント・ノウ

「この曲を書いたのはちょっと辛い時期を経験した後なんだ。別に深刻な話じゃないよ。でもそういうことってあるだろ?『ああ、何を僕は間違っちゃったんだろうな?』と思えるような時って。そういう気分の時に書けるのは、魂からの曲だから、実は良いことなんだ。ソングライティングは精神科医に悩みを打ち明けるみたいな、セラピーみたいなものだと言うけれど、まさにそうだね。僕が抱えていたちょっとした問題を診療室で専門家相手に喋る代わりに曲という形にした、というのがこの曲なんだ」

3. カム・オン・トゥ・ミー

「これは『口説きソング』だよ。僕は想像してるんだ。60年代、どこかのパーティー会場で気になる娘を見つけ『どうやってアプローチしようかな』と考えてる自分をね。気になる娘に会った男が『どこか二人きりになれる所に行かない? 連絡先を交換しない? 君から微笑みかけてきたから普通の話をする以上のことを望んでいるんじゃないの? 君が僕を誘うの? それとも僕が君を誘うの?』とそんな想像をしている、っていうファンタジーソングなんだ」

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4. ハッピー・ウィズ・ユー

「休暇中、ギターを何気なく弾いた時に、ふと思い出したんだ。暇な時間がたくさんあった頃は、ただブラブラと時間を費やし、ハイになって、結局は何もしないで1日を過ごしていたなと。何もしないことに忙しかったのさ。そんな思いをギターのリフに乗せたんだ。『かつては一日中ブラブラして/ハイになってた/でも最近はそうじゃない』。つまり人としての成長を歌った曲だ。人生にはそういう時期があったりする。何も生み出さず、計画性もなく、自分に甘い時期。後になればそうではなくなるのだけどね。そんな曲さ」

5. フー・ケアズ

「『フー・ケアズ』は聞いてるかもしれない人に向けて話している、ということを思って書いた曲なんだ。僕がイメージしてたのは、聞いてくれている若いファン、そして若者たち。彼らは日々、なんらかの問題を抱えて生きている。今の時代だったらネットでの中傷や荒らし行為になるのかな。僕が学生だった頃は、単にいじめたり、からかったりという感じだったが、今でも世界中でたくさんの子が誰かからいじめられたりしてる。僕にできるのは彼らを助けるアドバイスをすること。だからこう歌ってるんだ。『誰かにいじめられるのにウンザリしていないかい? 陰口を叩かれたりしたことはあるかい? たとえそうだとしても、誰がそんなこと気にする?!』と。でもコーラスの最後には、ちょっとしたヒネリがあって『誰が気にしてる? 僕が気にしてるよ』と歌ってるんだ」


6. ファー・ユー

「レコーディングが始まる前に曲が書き上がっていることもあるが、それ以外は、スタジオに入ってからその場でアイデアを練り、作っていく。この曲の時、僕はスタジオにライアン・テダーと入っていた。これ以外の曲はすべてグレッグ・カースティンとなんだが。この時は、アイデアとメロディの断片といくつかのコードだけしかなくて、それが少しずつ形になっていったんだ。そこにストーリー性を加えようとしていった。『さあ 出ておいで ベイビー 自分のことを話して 真実を言って 君のことが知りたいよ 僕は君がどう感じているか知りたい 君は僕がモノを盗みたくなるようにさせる 君のために欲しいから』というのが基本の発想で、そこから膨らんでいったんだ。基本、ラヴソングさ。ちょっとダーティなラヴソング。君のために!ってね」

7. コンフィダンテ

「ある時、自宅の部屋の角にふと目をやった。そこには普段から古いマーティンのギターが置いてあるんだ。ギターが弾きたくなった時、曲を書きたくなった時、いつでも手にして弾けるようにと。その時、最近まったく自分がギターを弾いてないことにと気付いたんだ。大昔、初めてギターを手に入れたばかりの頃、ギターはまさに友達だった。腹心の友(confidante)だった。部屋の隅っこに行ってはギターで曲を書く。ギターに向かって、心配事も打ち明けていたよ。そんなギターへの僕からのラヴソングだ。ギターには何でも腹を割って話した。秘密も明かした。そして他のいわゆる友達とは違って、ギターは戦う僕の側に常に立っていてくれた。友達、親友、腹心の友としてのギターを象徴する曲なんだ」

8. ピープル・ウォント・ピース

「何年も前のことになるが、イスラエルでライヴを行なったことがある。あの地域の政治状況はわかっていたので、ぜひイスラエルに行く前にパレスチナを訪れたいと僕は思った。イスラエルだけでライヴを行ない、パレスチナを蔑ろにしているという風に思ってほしくなかったからだ。そこでライヴ当日ではあったが、国境を越え、パレスチナの小さな音楽学校を訪れるアレンジをしてもらい、生徒達と握手をし、彼らの音楽を聴かせてもらったりした。パレスチナの人達との連帯を示したかったんだ。イスラエルに戻り、ワン・ヴォイスという政治グループのメンバー達と会った。とてもクールな連中だったよ。そして僕らは彼らのバッジをつけて、テルアビブのステージに立った。全て平和のための使命感からだった。彼らは本当に素晴らしい子供達だったよ。子供達というか、実際は若者だね。『君たちはどうなるのが望みなのかな?』と僕が尋ねると彼らは答えた。『僕らの望みはただ平和に家族と普通に暮らせることだ』と。その時、繋がったんだ。僕が子供の頃、当時は戦争のニュースが常に紙面やテレビを賑わせていた。僕は父親に『人間はどうしたいの? 平和に暮らしたいの? それとも戦争が好きなの?』と聞いた。すると父は僕の目を見て落ち着いた声で言ったんだ。『そんなことはないよ。人は平和を望んでる。戦争をしたいのは政治家や指導者だけで、一般の人間じゃない』と。父のその言葉はずっと僕の中に残っているんだ」

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9. ハンド・イン・ハンド

「夜遅く、ふと曲が浮かぶことがある。家にはピアノがあるんだが、それはかつて父が弾いていたもので、僕にとっては特別なピアノだ。そのピアノをある晩、弾いている時に見つけたコードが『ハンド・イン・ハンド』になったというわけだ。基本的にはラヴソングだよ。書いたのはナンシーとまだ付き合い始めた頃だったので、これから二人で手に手を取り合って歩んで行く人生のことを考えていた。でもそのうち、これはたくさんの人たちのことでもあるなと思った。同じような状況にいる大勢の人たち。愛する人と手を携えあって人生を歩んで行きたい、パートナーでありたいと願っている人たちさ。実はいい話があってね。レコーディングでは2名の女性チェロ奏者に来てもらった。バンド以外は彼女達だけだ。順調にレコーディングも終わり、彼女達に礼を述べると、そのうちの一人が言ったんだ。『実はもうじき結婚するんです。2回目なので少し緊張しているんです。でもこの曲を聴いたら、きっと大丈夫だという気がして来ました』と。僕も思ったよ。『それだ!』ってね。僕がこの曲を書いた理由はそういうことだったんだ」

10. ドミノズ

「曲のおもしろさは、人生に起きた何かから生まれることが多いということ。曲はその反動だったりするんだ。しかもすごく些細な出来事のね。例えば、誰かと口論をして『むしゃくしゃするから、ちょっとギターでも弾いて気分を直すか』と思ったり。この曲もそんな風に始まった曲だ。ごく普通の人のことを歌った歌。本当は全てうまく行ってるのに、そうは見えない状況というか。きれいに並んだドミノの列、その1つの駒が倒されると、全部がパタパタと倒れて行く。そんなイメージはまるで人生の象徴だなと思えたんだ。小さな一つの行動が、全体に大きな影響を与え、全てのドミノが倒れてしまうわけだからね。そんなパーソナルな曲なので、レコーディングもこじんまりとやりたいと思ったんだ。人生にはいろんなことがあり、ドミノが全て倒れてしまったとしても人生は続く。でも、最終的にはそれで大丈夫なのさ」

11. バック・イン・ブラジル

「ツアーでブラジルを訪れていた時、1日ぽっかりオフの日があったんだ。何も予定は入っていない。ホテルの部屋にはピアノがあったので、弾いているうちにリフが生まれ、ストーリーを考えたんだ。舞台はブラジル。その少女は未来を世界を夢見ていた。そしてある青年に出会い、意気投合。苦労もあれば、うまく行くこともある。彼女はデートをしたいが、彼は遅くまで仕事があっていけない…。そんなブラジル人の若いカップルの物語さ。ダンス調な曲調に合うブラジリアンリズムやフレーバーを乗せたんだ」

12. ドゥ・イット・ナウ

「『ドゥ・イット・ナウ(今やれ!)』というのは僕の父の口癖だったんだ。不思議なもので、年をとるとかつて両親や先生や友達から言われたことを思い出すようになる。父の言葉で印象に残っていたのが『今やれ!』だった。僕が『あとでやるよ』と先延ばしにすると、父は必ず『今やれ』と言ったんだ。頭文字をとってD-I-Nと言うこともあって、僕は子供心に『レコードレーベルの名前にしたらかっこいいな、DINって』と思ってた。ま、それはともかく、ずっと僕の頭の中に『今やれ』という父の言葉が残ってたんだ。そんな時、曲のアイデアを探していた。ちょうど僕は招きを受け、音楽の旅に出るところだったので、空想の旅で何処かに向かうことを書いてみたんだ。つまり、今やらなきゃ永遠にその場所に行くことはないかもしれないと。まるで父が『その旅に出るんだ、遅くなる前に』と言われて出る空想の旅なんだよ、この曲は。まさにドゥ・イット・ナウ(今やれ!)なんだ」

13. シーザー・ロック

「エンジニアのスティーヴとはスタジオに入り、何をやるのかわからないまま、即興でその時の気分のまま色々と試したりするんだ。僕がドラムマシンで何かをやって、そこにピアノやベースを乗せたり、歌ったり。ある日、そんな風にやっていた時だ。僕がカニエ・ウェストとの仕事で知った曲を混ぜてみたんだ。それがすごくいいように思えたんで、やってみることにしたんだ。少し神聖さを冒涜することだったけど、考えてみろ、ビートルズの曲にだってそういうのはある。『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』なんてこんな感じで、僕らは全然神聖じゃなかった。言うなりゃ『皇帝ロック』さ。冗談でそんな風に呼ぶようになったんだ。ただ楽しんでいただけだからね。ちょっと変わってて、なんでもありの曲だというところが、僕はすごく気に入ってしまったんだ。スタジオにいたエンジニアや、たまたまそこにいた人間に声をかけ『みんなでコーラスの大合唱をしてくれ』と頼んだ。何よりも気に入ってるのは、曲の最後のあたりで、なぜかそうなったのかいまだにわからないんだけど、そしてそれは多分僕のせいだと思うんだけど、叫んだんだよ。『彼女の歯はお揃いだ!』って。『彼女の歯はお揃いだ』っていうその発想自体が妙に気に入ってしまった。それをアルバム・タイトルにしようかと思ってたくらいだよ。Matching Teeth(お揃いの歯)、それだ!って。そんなわけで実に楽しませてもらった曲なんだ、『シーザー・ロック』は」

14. ディスパイト・リピーティッド・ウォーニングス

「ちょうど日本にいる時だ。新聞を読んでたんだ。トーキョー・タイムズだったか、ジャパン・タイムズだったか。それは気候変動に関する記事で、よくありがちな、人間はそのことに関して何もしていない、でも全てうまく行くから心配するな。氷山は溶けているかもしれないが、ロンドンでは溶けてないから心配するな、というような内容だった。その記事の中にこんなフレーズがあった。 Despite repeated warnings, they were not listening(繰り返し、警告があったにも関わらず、彼らはそれを聞いていなかった)。その Despite repeated warningというフレーズは、大勢の人たちの気持ちを代弁しているようで、気に入っちゃったんだ。そこでそれをシンボリズムにした曲を書こうと思った。そうなると、気候変動はでっち上げだと主張する政治家がぴったりなわけで、それが誰なのか、皆、すぐにわかるよね。僕はそいつを船長に仕立て上げた。彼が操縦する船の先には氷山があると警告を受けているのに、彼は自分のルートが正しいと信じ込み、『あいつらは物事を大げさに言っているだけだ』と聞く耳を持たないというよくある話なんだ。タイタニック号と同じストーリーさ。氷山に衝突して沈没するよ、という警告を受けても船長が『僕らは大丈夫』と言ったらそこまでだ。狂った船長、そして乗客は皆、彼が間違ってることを知っている、というそんな構図だ。今の政治、ということを考えた時、なんともシンボリックだと思える曲だ。『バンド・オン・ザ・ラン』や『死ぬのは奴らだ』に通じる、今の時代ならではでありながらも、広い意味での壮大なプロダクションだ。気候変動は決してでっち上げではないことを知らせ、狂った船長が僕らの乗った船を氷山に衝突させようとしていることを止めさせなきゃならないんだ」

15.  ステーションII

「これはアルバム1曲目、空想のステーションというサウンドスケープの続編だ。ステーション、すなわち列車が発着する『駅』という発想がとてもいいなと思ったんだ。もしくは『ラジオ局』なのかもしれない。何れにせよそれは空想の場所だ。その場所の音風景を作り出すという発想を楽しみながら行なったんだ。そしてその最後にバスキングのミュージシャンがその大きな駅にやってきて、ギターをアンプにつなぎ、曲を弾いて客から金をもらうというのもいいんじゃないかと思ったんだ。そこで彼が弾くのは『ハント・ユー・ダウン』の頭の部分のフレーズ。それはどんどん音が上がっていき、そのまま次の曲になるというわけだ」

16. ハント・ユー・ダウン/ネイキッド/C-リンク

「これは3部から成る曲。まずはロック調の『ハント・ユー・ダウン』。歌詞はこんな風だ。『恋人は見つからない。どんなに頑張っても。言い逃れてばかりだ』 ブルースのナンバーによくある『ぼやきソング』さ。『僕を傷つけないでくれ。彼女はどこにもいない』 そんな歌詞だよ。僕も楽しんで歌ってる。それがロックンロール調の『ハント・ユー・ダウン』。

そして『ハント・ユー・ダウン』の最後で4/4から3/4にテンポ・チェンジし、次の曲『ネイキッド』へとそのまま繋がっていくんだ。こちらはとてもシンプルな曲で、僕がほぼ一人で録音したんだ。『生まれた時から僕はずっとNaked(裸)だった』という内容。人生において人は皆、様々な経験をするが、どこか社会的に『裸にされたような、どう対処したらいいかわからない』状況に置かれることがあると思うんだ。そんな気持ちを僕なりの解釈で、スタジオで演奏も歌も一人でやった曲だよ。

そして次に繋がるのが『C-リンク』という最後の曲。元になったのは11分くらいのセッションで、僕はギターに没頭したいがために弾きまくってたんだ。よく『なぜ今だに音楽を続けているの?』と尋ねられるけど、答えは『大好きだから!』それだけさ。アンプのスイッチをONにして、ギターを手にし、シールドをさし、大きな音で演奏する。それだけのことを今も続けていられることが、どれほどの幸せか! そのスリルと言ったら! どれほどやり続けていようともスリルが消えることは決してないよ。(このセッションの時)僕が弾いたのは大半はブルージーなフレーズだったんだが、1つ~2つメロディアスなフレーズが生まれたので、それをオーケストラ用に編曲して曲にしたんだ。実は随分昔から、誰かにオーケストラをバックにブルースギターのコードを弾かせたいと思ってたんだ。その誰かが、自分になってしまったというわけだ。そしてそのコードがC、そしてCマイナーだったというわけさ。オーケストラがこのコードをずっと鳴らし、そこにギターが飛び込んでくる。アルバムはそうやって終わるんだ。とにかく楽しいセッションだった。だから最後に「フー!」と叫んでいるのが聞こえるんだよ」

ポール・マッカートニー『エジプト・ステーション』は傑作のおすすめアルバムです。ぜひ聴いてみてください!

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