ポール・マッカートニー『マッカートニーII』自宅録音のテクノポップアルバム

1980年5月に発表されたポール・マッカートニーのアルバム『マッカートニーII』を紹介します。原題は『McCartney II』。ジャケット写真は妻のリンダ・マッカートニーが撮影したものです。

1980年1月16日、ウイングス来日公演で成田空港に降り立ったポールは大麻取締法違反(不法所持)で現行犯逮捕されました。世界に衝撃を与えたこの事件、ポールは10日後に勾留を解かれ国外退去処分となります。日本のファンが待ち望んでいたウイングス来日公演は中止となり、ファンは悲嘆に暮れました。

事件の余韻が残る5月に発売された本アルバムは、それまでのウイングスとは全く違うサウンドのアルバムでした。バンドでの録音ではなく、ポールの自宅スタジオでポール1人で多重録音して作ったアルバムです。ポールはマルチプレイヤーであり、ビートルズの楽曲にもポール1人で録音した楽曲があります。元々はポールは自宅録音の楽曲を発表する意思は無く、作った楽曲も50曲以上ありましたが、レコード会社の要請でベストテイクをアルバムとしてリリースしました。サウンド的には当時流行のテクノポップが多く、大ブームであったイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の影響が見てとれます。

タイトルの『マッカートニーII』は、1970年のビートルズ解散期に発表されたソロ1作目『マッカートニー』に対応するものです。ソロ2作目がリンダとの共作名義、3作目以降はウイングス名義であったため、ビートルズ解散から10年の区切りとなった完全なソロ名義作品2作目となります。

本アルバム発表後の1980年12月8日にジョン・レノンが射殺されるというショッキングな出来事があり、ポールは一時的に音楽活動を停止します。1981年4月にウイングスは解散し、本アルバムは結果としてポールのソロアーティストとして始動した1枚となりました。

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それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 カミング・アップ

ポールはまさかのテクノポップのサウンドを発表し世界中を驚かせました。アルバムに先行してシングル発売され、アメリカで1位を獲得しています。
プロモーションビデオではポールがロック界のスターに扮して1人10役をこなしています。バディ・ホリー、アンディ・マッケイ、フランク・ザッパなどに混じり、ビートルズ時代のポール自身をも演じていました(笑)。ポールはこの架空のスーパーグループをジョン・レノンのプラスティック・オノ・バンドをもじって「プラスティック・マックス」と命名しています。
本曲はウイングスのステージでも演奏されていました。ソロコンサートでも取り上げられることがあり、2002年の東京ドーム公演で歌われています。ライブアルバムでは1990年発売の『ポール・マッカートニー・ライブ!!』、2002年発売の『バック・イン・ザ・U.S.』に収録されています。

ウイングス来日の際、ポールはイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)がレコーディングしているスタジオを訪れる予定でした。大麻不法所持により実現されませんでしたが、YMOの楽曲『ナイス・エイジ』では本曲と同じ「Coming Up Like A Flower」というフレーズが流れます。『ナイス・エイジ』の中でニュース速報として読み上げられる「22番」はポールの拘置所内での番号でした。

A-2 テンポラリー・セクレタリー

これもまさにテクノポップサウンドの曲です。平坦な曲調に乗せて、ポールのヴォーカルはクールです。枚数限定でイギリスでのみシングル発売されました。ポールのコンサートで開演前に会場に流されるDJセットのフィナーレに組み込まれており、その影響でポールはコンサートで本曲を取り上げるようになりました。2017年の東京ドーム公演で歌われています。

A-3 オン・ザ・ウェイ

スローテンポの曲で、ポールの弾くブルースギターが印象的な曲です。たっぷりとエコー処理されたヴォーカルが耳に残る異色作です。

A-4 ウォーターフォールズ

ウォーターフォールズは「滝」の意味ですが、ロンドンから100kmほど離れたケントにあるポールの家の愛称です。本アルバムからのセカンドシングルで、元々はウイングス用に書かれた曲でした。ポールらしい美しいメロディーのバラードで、私の大好きな曲です。本曲のミュージックビデオには歌詞に出てくるホッキョクグマ(polar bear)が登場しました。

A-5 ノーボディ・ノウズ

ノリのいいロックンロールナンバーです。1970年代後半から1980年代前半にかけて流行したニューウェーヴの影響を感じる曲です。

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B-1 フロント・パーラー

テクノポップのYMO風のインストルメンタル曲です。シンセサイザーとリズムマシーンのみでレコーディングされています。

B-2 サマーズ・デイ・ソング

幻想的な美しいメロディーの曲で、とても重厚感のあるスローな曲です。メロトロンでフルートの音を出しており、これはビートルズ『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』で使った音でした。

B-3 フローズン・ジャパニーズ

ポールが作った「和風テクノ」のインストルメンタル曲で、YMOからのストレートな影響を感じる曲です。タイトルは「無情な日本人」で、大麻不法所持逮捕と関連付けられて話題となりました。原題は『Frozen Jap』で、日本人への差別語として使われる「Jap」が使われていることから、日本版のみ『Frozen Japanese』に記載変更されました。ポール本人は日本人への侮辱の意図を否定しており、「イギリスではそこまで悪い意味ではない」「簡潔なタイトルにしたかっただけ」とコメントしています。

B-4 ボギー・ミュージック

テクノポップ風のロカビリーナンバーで、ポールによるエルヴィス・プレスリーのパロディーです。

B-5 ダークルーム

軽快なリズムナンバーで、アドリブ的に作られた曲です。ポールは他の楽曲では見せたことのない変わったヴォーカルを披露しています。

B-6 ワン・オブ・ディーズ・デイズ

アコースティックギターの弾き語りでポールが歌う優しいメロディーの曲です。ポールのワンマンレコーディングであった本アルバムですが、本曲では妻のリンダがバックコーラスをつけています。

ポール・マッカートニー『マッカートニーII』を聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

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