ジョン・レノン『心の壁、愛の橋』ヨーコと別居中に制作した傑作アルバム

1974年に発売されたジョン・レノンのアルバム『心の壁、愛の橋』を紹介します。原題は『Walls and Bridges』。当時、ローリングストーン誌で「レノンの最高傑作」と評価されたアルバムです。

「失われた週末(The Lost Weekend)」と呼ばれる、オノ・ヨーコとの別居中に制作されたアルバムです。ヨーコは1998年の『ジョン・レノン・アンソロジー』のブックレットで当時を次のように振り返っています。

「1972年、ジョンと私はパーティーに招待されました。ジョンは完全に酔っぱらってしまい、一人の女性を隣の部屋に連れ込んで愛の行為を始めました。ようやくジョンが部屋から出てきたとき、私はかつてないほど青ざめた顔をしていたといいます。『あの表情は忘れられなかった』とジョンは長いこと、そう言っていました」

「あの夜、私の中で何かが失われました。ジョンといっしょに暮らすのは、たいへん骨の折れることでした。私は壊されたぼろぼろの人形のような気持ちでした」

「私はジョンに、試しに別居してみたらうまくいくのではないかと言いました。『ロサンジェルスに行ってみるというのはどうかしら? 昔、ビートルズのツアーで行って、楽しかったって話してたじゃない』と私は具体的な方法を提案しました。『わかった。でも僕は君と別れたくないよ』とジョンは言いました。『このままいっしょにいたら、私たちはお互いを失うことになるわ』と私は言いました」

ジョンは久々の独身生活を味わい、思い切り羽目を外します。

「最初の4日間、ジョンは驚くほど有頂天になっていました。電話をしてきて、しきりに『ありがとう』と言いました。『ヨーコ、君はすごいよ。素晴らしい! 感謝!』その言葉に皮肉は感じられませんでした。ジョンがうれしそうで良かったと思いました。ところが4日目を過ぎると、ジョンは全く違う声で電話をしてきました。『もう十分だ。家に帰りたいよ』 私は笑い飛ばしました」

ジョンは本当に子供のようですね(笑)。

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それではヨーコ不在で作られたアルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 愛を生きぬこう

原題は『Going Down on Love』。原題は愛にひざまずくの意味で、ヨーコに送った必死のサインです。ブラスセクションを入れたミディアムテンポの曲で、変化に富んだメロディーの曲です。1981年に東芝EMIがジョンの追悼シングルとして発売した『ジェラス・ガイ』のB面曲でもありました。

A-2 真夜中を突っ走れ

原題は『Whatever Gets You Thru the Night』。ジョンがエルトン・ジョンとデュエットした気持ちのよいロックンロールで、サックスの音色が抜群にイカしています。本アルバムからの最初のシングル曲で、アメリカで1位を獲得しています。

この曲を録音したとき、エルトンはジョンと賭けをしました。本曲が1位になったら一緒にコンサートに出ることをエルトンはジョンに約束させたのです。本曲は1位を獲得し、ジョンは1974年11月28日にマジソンスクエアガーデンで行なわれたエルトンのコンサートに参加、本曲を熱唱しました。そして、楽屋で1年ぶりにヨーコに再会し、元のさやにおさまります。

A-3 枯れた道

原題は『Old Dirt Road』。ジョンとハリー・ニルソンの共作曲です。ドリーミーなミディアムナンバーで、私の大好きな曲です。荒れ果てた独身生活を送っていたジョンは毎晩飲んだくれていました。悲惨な状況にあった心境を「古びた埃っぽい道(Old Dirt Road)」とジョンは表しています。

A-4 ホワット・ユー・ガット

ジョンの楽曲の中では極めて珍しいファンキーな曲です。アレンジはスティービー・ワンダー風です。サビの「自分の持っているものに気が付かないのさ、それを失うまでは」という歌詞は別居中のヨーコ、あるいはビートルズの盟友ポール・マッカートニーを想起させます。シングル『夢の夢』のB面曲でもありました。

A-5 果てしなき愛(ブレッス・ユー)

原題は『Bless You』。ジョンが「幸あれ」と世界中の人々に向けて愛を歌った曲です。とても甘美なメロディーで、ジョンの歌声は艶っぽいです。

A-6 心のしとねは何処

原題は『Scared』。狼の遠吠えで始まり、ジョンが「こわい、こわいよ、こわいんだ」と繰り返し歌う、重厚なブルース調の曲です。ロサンゼルスの独身生活で自分を見失いつつあるジョンが「恐れ」「悩み」を訴えており、「僕は疲れた。独りぼっちでいるのはもうたくさん」とヨーコのいない寂しさを赤裸々に吐露しています。

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B-1 夢の夢

原題は『#9 Dream』。本アルバムから2枚目のシングル曲です。ストリングスが使われた美しいメロディーの曲で、まさに夢心地といったイメージの浮遊感のある曲です。原題にある9はジョンのラッキーナンバーで、ビートルズ時代にも『レボリューション9』『ワン・アフター・909』といった曲がありました。

B-2 予期せぬ驚き

原題は『Surprise, Surprise(Sweet Bird of Paradox)』。暗い印象の曲が多い本アルバムの中で、ひときわ明るい印象の曲です。ジョンの身の回りの世話をさせるためにヨーコが同行させた中国人女性秘書メイ・パンのことを歌っているといわれている曲です。

B-3 鋼のように、ガラスの如く

原題は『Steel and Glass』。契約をめぐってトラブル関係にあった元マネージャのアレン・クレインを痛烈に皮肉った曲です。「君のお母さんは君が小さいときにいなくなった」とジョン自身のトラウマである歌詞にドキッとします。冷たい印象の曲で、途中からストリングスが加わります。アルバム『イマジン』でポール・マッカートニーを攻撃した曲である『ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?』に似た印象の曲です。

B-4 ビーフ・ジャーキー

ジョンには珍しいインストルメンタル曲です。ファンキーなメロディーで、不思議なグルーヴ感を醸し出しています。シングル『真夜中を突っ走れ』のB面曲でもありました。

B-5 愛の不毛

原題は『Nobody Loves You(When You’re Down and Out)』。原題は「打ちひしがれている時は、誰も愛してくれない」の意味で、ヨーコと別居中の寂しさが伝わっています。オーケストラによる重厚でドラマチックなアレンジの曲で、淡々としたジョンのヴォーカルには風格を感じます。ジョン自身が「フランク・シナトラの楽曲を意識した」と語っているとおり、重厚なスタンダードナンバーのような曲に仕上がっています。

B-6 ヤ・ヤ

アルバムの最後はお遊びのおまけで、当時10歳の息子ジュリアン・レノンが叩くマーチングドラムに合わせての即興演奏です。オリジナルは1961年にリー・ドーシーが歌ってヒットしたロックンロールナンバーです。ジョンはアルバム『ロックン・ロール』で本曲のちゃんとしたカバーを聴かせています。

ジョン・レノン『心の壁、愛の橋』はおすすめアルバムです。聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

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