『ポール・マッカートニー』ビートルズ解散の混乱の中で作ったファーストソロアルバム

1970年に発売されたポール・マッカートニー初のソロアルバム『ポール・マッカートニー』を紹介します。原題は、Paul McCartneyMcCartney』。

1969年9月30日、ビートルズの4人はレコード会社との契約書にサインするために顔を合わせました。その席上でジョン・レノンがビートルズ脱退の意思を突如、明らかにします。そしてビートルズは事実上、解散となりました。ビートルズ解散という事態に直面したポールは精神的に打ちのめされ、スコットランドの自宅農場に引きこもります。その後、妻リンダのおかげで回復したポールは本アルバムの制作に取り掛かりました。

アルバムを完成させたポールはその発売をめぐりマネージメント側と対立します。ビートルズのマネージメント担当であったアラン・クレインはアルバム『レット・イット・ビー』を優先させるため、ポールのアルバム発売を遅らせようとしました。しかしポールは1970年4月10日にビートルズ脱退を表明、本アルバムは4月17日にイギリスで、4月20日にアメリカで発売されました。(アルバム『レット・イット・ビー』はその後の1970年5月8日にイギリスで、5月18日にアメリカで発売されました。)

ソロアルバム発売と合わせてビートルズ脱退宣言を行なったポールについて、ジョンは「ポールはNo.1のPRマンだ」と痛烈に皮肉りました。実際、本アルバムはアメリカで3週連続1位を獲得する大ヒットとなります。この出来事を境にしてジョンとポールは数年間、険悪になります。

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本アルバムは全ての楽器をポール一人が演奏するワンマンレコーディングになっています。ポール以外に参加しているのは妻のリンダ・マッカートニーだけです。本アルバムは「粗さ」や「いい加減さ」が目立つアルバムですが、それはビートルズで『アビイロード』という完璧なアルバムを制作した直後の反動でしょう。

それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 ラヴリー・リンダ

アコースティックギターに乗せてリンダへ向け愛を歌う小作品です。ポールがリンダとの結婚後、最初に作った曲です。ポールが「自宅で録音した最初の曲。リンダが居間から庭へ歩いていく音が聞こえるだろ」というように、機材のテストを兼ねてレコーディングされています。パーカッションの代わりに本を叩いています。

A-2 きっと何かが待っている

原題は『That Would Be Something』。ロカビリータッチの曲調で、ポールのけだるいヴォーカルはエルヴィス・プレスリーを想起させます。

A-3 バレンタイン・デイ

短いインストルメンタル曲です。エレキギターとアコースティックギターだけで構成されており、中途半端な出来の曲です。機材のテストを兼ねて録音された曲と言われています。

A-4 エヴリナイト

翳りのあるアコースティックギターの小作品です。ライヴアルバム『公式海賊盤 Unplugged (The Official Bootleg)』『バック・イン・ザ・U.S.』にも収録されています。

A-5 燃ゆる太陽の如く

原題は『Hot As Sun』。ポールが10代の時に作った曲で、南国を思わせる陽気なインストルメンタル曲です。

A-6 グラシズ

わずか30秒足らずの即興演奏のお遊びです。CD化の際に前曲『燃ゆる太陽の如く』とメドレー扱いになり1曲に統合されました。

A-7 ジャンク

マイナー調のアコースティックバラードで、ポールらしいメロディーラインの名曲です。1968年に作られた曲で『ホワイトアルバム』のデモテイクで録音されており、その音源は『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に収録されています。ライヴアルバム『公式海賊盤 Unplugged (The Official Bootleg)』にも収録されています。

A-8 男はとっても寂しいもの

原題は『Man We Was Lonely』。リンダがハーモニーで加わっており、ポールは「僕らの初めてのデュエットナンバー」と発言しています。ビートルズ解散の真っただ中にいたポールの偽らざる心境を歌っているとして大きな話題になった曲です。

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B-1 ウー・ユー

単調なギターのリフに乗って展開されるブルージーな曲です。最初のレコーディングではインストルメンタル曲でしたが、後で歌をつけています。

B-2 ママ・ミス・アメリカ

ポール得意の、別々の2曲をくっつけてメドレー仕立ての1曲にしたインストルメンタル作品です。ピアノ、ドラムス、ギターのまとまりのある演奏になっています。

B-3 テディ・ボーイ

元々はビートルズの楽曲として作れらたフォーク調の曲です。ゲットバックセッションで演奏されており、その音源は『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に収録されています。テッドという少年の物語にポール自身が重なります。

B-4 シンガロング・ジャンク

A面の『ジャンク』のインストルメンタル編です。哀愁漂う美しいメロディーをアコースティックギターとピアノが奏でます。

B-5 恋することのもどかしさ

原題は『Maybe I’m Amazed』。リンダへ捧げられた、ポールの名曲中の名曲で、私の大大大好きな曲です。ポールは「アルバムで一番成功した曲。シングルカットすべきだった」と発言しています。その後、1976年リリースのライヴアルバム『ウイングス U.S.A.ライヴ(Wings Over America)』に収録され、このときのアレンジと演奏が素晴らしく、ウイングス15枚目のシングルとしてシングルカットされました。このときの邦題は『ハートのささやき』で、1つの楽曲に2つの邦題が与えられた曲です。

B-6 クリーン・アクロア

ブラジルのインディオに捧げられたインストルメンタル曲です。パーカッションをメインとする実験的な曲で、リンダが呼吸音を担当しています。

『ポール・マッカートニー』を聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

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リンゴ・スター『リンゴズ・ロートグラビア』ビートルズ3人とクラプトンが協力!

1976年に発売された元ビートルズ、リンゴ・スターのソロアルバム『リンゴズ・ロートグラビア』を紹介します。原題は、Ringo StarrRingo’s Rotogravure』。

元ビートルズのジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスンの3人が楽曲を提供したアルバムで、リンゴとしては相当に気合いの入ったアルバムでした。更にエリック・クラプトンも楽曲を提供、ギター演奏もしており大変豪華なアルバムです。
残念ながら大ヒットとはなりませんでしたが、ビートルズ3人+エリック・クラプトンが楽曲提供しているところだけでもビートルズファンにはチェックしてもらいたいアルバムです。

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それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 ロックは恋の特効薬

原題は『A Dose Of Rock’n Roll』。アルバムはリンゴのシャウトから始まります。当時人気絶頂だったピーター・フランプトンがギターを弾いており、リンゴの意気込みが伝わってきます。カール・グロスマンが作ったスローなロックンロールナンバーで、シングルでも発売されました。作者のカール・グロスマンはリンゴが設立したレーベルのアーティストでした。本曲はリンゴのお気に入りの曲で、ベストアルバム『フォトグラフ:ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・リンゴ・スター』にも収録されています。

A-2 ヘイ・ベイビー

1962年にブルース・チャンネルの歌で全米1位に輝いたソウルナンバーのカバーです。本アルバムからの第2弾シングルでもありました。こちらもベストアルバム『フォトグラフ:ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・リンゴ・スター』に収録されています。

A-3 ピュア・ゴールド

ポール・マッカートニーがリンゴにプレゼントした曲です。ゆったりとした曲で、バックコーラスでポールとリンダが参加しています。

A-4 クライン

リンゴとヴィ二・ポンシアの共作曲で、リンゴが好きなカントリー調の曲です。シングル『ロックは恋の特効薬』のB面曲でもありました。

A-5 ユー・ドント・ノウ・ミー・アット・オール

やさしいメロディーで、聴いていて気持ちの良い、私の大好きな曲です。作者はデイヴ・ジョーダンです。

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B-1 クッキン

ジョン・レノンがリンゴにプレゼントした曲です。ノリのよい曲で、ジョンはピアノを弾いています。これは1980年にジョンが復帰するまでの最後となる公式レコーディングでした。本曲をジョン自身が歌う音源が存在しているので、YouTubeや海賊盤を探してみてください。

B-2 アイ・スティル・ラヴ・ユー

ジョージ・ハリスンがリンゴにプレゼントした曲です。ドラマチックなアレンジの曲で、本曲についてジョージはエリック・クラプトンと結ばれた元妻のパティへの気持ちを歌に託したとしています。尚、ジョージは演奏には参加していません。

B-3 これが歌ってものさ

そのエリック・クラプトンがリンゴにプレゼントした曲です。原題は『This Be Called A Song』。明るく爽やかな印象の曲です。クラプトンはギターも弾いており、説得力のあるサウンドになっています。

B-4 ラス・ブリサス

リンゴが恋人のナンシー・アンドリュースと共作した曲です。明るいレゲエナンバーで、リンゴはマラカスをプレイしています。

B-5 レディ・ゲイ

最後の曲はクリフォード・T・ワードのヒット曲『ゲイ』をもとに、リンゴとヴィ二・ポンシアが作った曲です。リンゴらしい明るいヴォーカルでアルバムが締めくくられます。シングル『ヘイ・ベイビー』のB面曲でもありました。

そして、アルバム最後に『スプーキー・ウィアードネス』と題された「おまけ」が収録されています。

『リンゴズ・ロートグラビア』はおすすめアルバムです。現在は入手困難ですが、輸入レコード店などで探せると思います。聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

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ポール・マッカートニー『マッカートニーII』自宅録音のテクノポップアルバム

1980年5月に発表されたポール・マッカートニーのアルバム『マッカートニーII』を紹介します。原題は『McCartney II』。ジャケット写真は妻のリンダ・マッカートニーが撮影したものです。

1980年1月16日、ウイングス来日公演で成田空港に降り立ったポールは大麻取締法違反(不法所持)で現行犯逮捕されました。世界に衝撃を与えたこの事件、ポールは10日後に勾留を解かれ国外退去処分となります。日本のファンが待ち望んでいたウイングス来日公演は中止となり、ファンは悲嘆に暮れました。

事件の余韻が残る5月に発売された本アルバムは、それまでのウイングスとは全く違うサウンドのアルバムでした。バンドでの録音ではなく、ポールの自宅スタジオでポール1人で多重録音して作ったアルバムです。ポールはマルチプレイヤーであり、ビートルズの楽曲にもポール1人で録音した楽曲があります。元々はポールは自宅録音の楽曲を発表する意思は無く、作った楽曲も50曲以上ありましたが、レコード会社の要請でベストテイクをアルバムとしてリリースしました。サウンド的には当時流行のテクノポップが多く、大ブームであったイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の影響が見てとれます。

タイトルの『マッカートニーII』は、1970年のビートルズ解散期に発表されたソロ1作目『マッカートニー』に対応するものです。ソロ2作目がリンダとの共作名義、3作目以降はウイングス名義であったため、ビートルズ解散から10年の区切りとなった完全なソロ名義作品2作目となります。

本アルバム発表後の1980年12月8日にジョン・レノンが射殺されるというショッキングな出来事があり、ポールは一時的に音楽活動を停止します。1981年4月にウイングスは解散し、本アルバムは結果としてポールのソロアーティストとして始動した1枚となりました。

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それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 カミング・アップ

ポールはまさかのテクノポップのサウンドを発表し世界中を驚かせました。アルバムに先行してシングル発売され、アメリカで1位を獲得しています。
プロモーションビデオではポールがロック界のスターに扮して1人10役をこなしています。バディ・ホリー、アンディ・マッケイ、フランク・ザッパなどに混じり、ビートルズ時代のポール自身をも演じていました(笑)。ポールはこの架空のスーパーグループをジョン・レノンのプラスティック・オノ・バンドをもじって「プラスティック・マックス」と命名しています。
本曲はウイングスのステージでも演奏されていました。ソロコンサートでも取り上げられることがあり、2002年の東京ドーム公演で歌われています。ライブアルバムでは1990年発売の『ポール・マッカートニー・ライブ!!』、2002年発売の『バック・イン・ザ・U.S.』に収録されています。

ウイングス来日の際、ポールはイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)がレコーディングしているスタジオを訪れる予定でした。大麻不法所持により実現されませんでしたが、YMOの楽曲『ナイス・エイジ』では本曲と同じ「Coming Up Like A Flower」というフレーズが流れます。『ナイス・エイジ』の中でニュース速報として読み上げられる「22番」はポールの拘置所内での番号でした。

A-2 テンポラリー・セクレタリー

これもまさにテクノポップサウンドの曲です。平坦な曲調に乗せて、ポールのヴォーカルはクールです。枚数限定でイギリスでのみシングル発売されました。ポールのコンサートで開演前に会場に流されるDJセットのフィナーレに組み込まれており、その影響でポールはコンサートで本曲を取り上げるようになりました。2017年の東京ドーム公演で歌われています。

A-3 オン・ザ・ウェイ

スローテンポの曲で、ポールの弾くブルースギターが印象的な曲です。たっぷりとエコー処理されたヴォーカルが耳に残る異色作です。

A-4 ウォーターフォールズ

ウォーターフォールズは「滝」の意味ですが、ロンドンから100kmほど離れたケントにあるポールの家の愛称です。本アルバムからのセカンドシングルで、元々はウイングス用に書かれた曲でした。ポールらしい美しいメロディーのバラードで、私の大好きな曲です。本曲のミュージックビデオには歌詞に出てくるホッキョクグマ(polar bear)が登場しました。

A-5 ノーボディ・ノウズ

ノリのいいロックンロールナンバーです。1970年代後半から1980年代前半にかけて流行したニューウェーヴの影響を感じる曲です。

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B-1 フロント・パーラー

テクノポップのYMO風のインストルメンタル曲です。シンセサイザーとリズムマシーンのみでレコーディングされています。

B-2 サマーズ・デイ・ソング

幻想的な美しいメロディーの曲で、とても重厚感のあるスローな曲です。メロトロンでフルートの音を出しており、これはビートルズ『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』で使った音でした。

B-3 フローズン・ジャパニーズ

ポールが作った「和風テクノ」のインストルメンタル曲で、YMOからのストレートな影響を感じる曲です。タイトルは「無情な日本人」で、大麻不法所持逮捕と関連付けられて話題となりました。原題は『Frozen Jap』で、日本人への差別語として使われる「Jap」が使われていることから、日本版のみ『Frozen Japanese』に記載変更されました。ポール本人は日本人への侮辱の意図を否定しており、「イギリスではそこまで悪い意味ではない」「簡潔なタイトルにしたかっただけ」とコメントしています。

B-4 ボギー・ミュージック

テクノポップ風のロカビリーナンバーで、ポールによるエルヴィス・プレスリーのパロディーです。

B-5 ダークルーム

軽快なリズムナンバーで、アドリブ的に作られた曲です。ポールは他の楽曲では見せたことのない変わったヴォーカルを披露しています。

B-6 ワン・オブ・ディーズ・デイズ

アコースティックギターの弾き語りでポールが歌う優しいメロディーの曲です。ポールのワンマンレコーディングであった本アルバムですが、本曲では妻のリンダがバックコーラスをつけています。

ポール・マッカートニー『マッカートニーII』を聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

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ポール・マッカートニー&ウイングスのファーストアルバム『ワイルド・ライフ』

1971年12月に発売されたポール・マッカートニー&ウイングスのファーストアルバム『ワイルド・ライフ』を紹介します。原題は、WingsWild Life』。

ウイングスはメンバーチェンジが激しいグループでしたが、結成当時のメンバーはポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、デニー・レイン、デニー・シーウェルの4人でした。
また、発売当時のアーティスト名は単に「ウイングス」でした。ウイングスだけでは知名度が低いため、レコード会社からの要請で、のちに「ポール・マッカートニー&ウイングス」となります。

2週間という短期間でレコーディングされた本アルバムは粗削りな演奏でマスコミから酷評されたアルバムでした。当時は不仲であった盟友ジョン・レノンだけが「いいね。悪くないよ。あいつはいい方向に進んでいる」とポジティブなコメントをしています。

それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 マンボ

ポールには珍しいジャム風の作品です。荒々しいエレキギターやオルガンの音に耳を奪われます。タイトルのマンボは音楽のジャンルのマンボ(Mambo)ではなく、Mumbo jumbo(何を言っているのか分からない言葉)の『Mumbo』です。実際、ポールのヴォーカルは何と歌っているのか聞き取れません。

A-2 ビップ・ボップ

タイトルはポールの娘メアリーが口に出した意味の無い言葉からとったもので、歌詞に特別な意味はありません。単純なギターのリフを基調とする曲で、テープスピードの操作とエコー処理によってポールの歌声は別人のようです。

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A-3 ラヴ・イズ・ストレンジ

オリジナル作品ではなく、1956年にミッキーとシルビアが放ったミリオンセラー曲のカバーです。1965年にエヴァリー・ブラザースがリバイバルヒットさせており、ウイングスはこちらを元にしてレコーディングしています。ウイングスが他人の曲を取り上げるのは大変珍しいです。レゲエの軽快なリズムに乗せて、ポールは伸びやかに歌っています。ウイングスのコーラスワークも聴きどころです。

A-4 ワイルド・ライフ

アルバムタイトル曲で、動物愛護をテーマにしたメッセージソングです。ドラマチックなソウルバラードで、ポールは感情をたっぷりと注ぎ込んで歌っています。リンダとデニー・レインによるコーラスも美しいです。


 
B-1 サム・ピープル・ネヴァー・ノウ

ポールとリンダがデュエットしている美しいメロディーの曲です。ジョン・レノンのアルバム『イマジン』に収められていた『ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?』でジョンから攻撃されたポールのアンサーソングです。

B-2 アイ・アム・ユア・シンガー

これもポールとリンダのデュエット曲で、リンダのソロパートもある、優しく美しいラヴバラードです。ポールとリンダのアツアツぶりが伝わってくる甘い歌で、リコーダーの音色がとても印象的です。

本曲と次曲の間にA面の『ビップ・バップ』をアコースティックギターで弾いたインストルメンタルの小作品がつなぎとして収録されています。CDでは『ビップ・ボップ・リンク』と名付けられて1曲の扱いになっています。

B-3 トゥモロウ

ビートルズ時代の名曲『イエスタデイ(昨日)』を意識して作られた『トゥモロウ(明日)』で、途中までのコード進行は『イエスタデイ』と同じでキーが変わっているだけです。ポールのエモーショナルなヴォーカルが印象的です。

B-4 ディア・フレンド

ポールのピアノの弾き語りで始まる物悲しいバラードで、途中からオーケストラも加わります。「ディア・フレンド」と歌われているその友達はジョン・レノンで、「もうこれ以上は本当に駄目?」とビートルズ解散におけるジョンへの感慨をポールは切々と歌っています。

そして最後に粗削りなインストルメンタルの小作品が入っています。非常に中途半端な演奏でアルバムが終わります。この曲もCDでは1曲として扱われるようになり『マンボ・リンク』と名付けられています。

ウイングス『ワイルド・ライフ』を聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

ポール・マッカートニー『ラム』リンダとの共作アルバムでジョン・レノンを批判

1971年5月に発売されたポール&リンダ・マッカートニー名義のアルバム『ラム』を紹介します。原題は、Paul & Linda McCartneyRam』。

ポールにとってビートルズ解散後2作目となるアルバムです。ポールは2012年のラム【スーパー・デラックス・エディション】発売に際して次のようにコメントしています。
「これは世界が今とは異なっていた、昔、昔のアルバムです。このアルバムは僕の歴史の一部で、それが生まれたスコットランドの小さな丘にまでさかのぼります。そのアルバムの名は『ラム』です。それは僕がヒッピーとして過ごした日々、そしてその制作における自由な姿勢を思い起こさせます。みなさんに気に入ってもらえるよう祈っています、僕は気に入っていますから!」

ポール&リンダ・マッカートニー名義で発表された唯一のアルバムです。写真家であったリンダは最初は音楽的には素人でした。素人である妻のリンダを音楽活動に引き込んだポールは一部のファンから非難を受けます。しかし、本アルバムでのリンダのコーラスはとても素晴らしいです。そして、そのリンダの声は後のウイングスのサウンドに欠かせないものになります。

また、楽曲的にはこの時期、不仲であったジョン・レノンを批判した曲が多いのも本アルバムの特徴となっています。
それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 トゥ・メニー・ピープル

ビートルズ解散前後に不仲であったジョン・レノンを批判した曲でアルバムは始まります。「君はチャンスを掴んでいたのに、それを自分でぶち壊してしまったね。それが君の間違いの始まりさ」という歌詞はジョンを皮肉ったものとして話題になりました。少し調子が外れたようにも聴こえるポールの歌声で始まる元気の良い曲で、リンダのバックコーラスも元気が良いです。アメリカで発売されたシングル『アンクル・アルバート~ハルセイ提督』のB面曲でもありました。

A-2 3本足

原題は『3 Legs』。これもジョン・レノンを批判した曲です。ポールは「君は親友だと思っていた。それなのに君は僕を裏切ってガッカリさせた」と歌っています。カントリーブルース調の曲で、出だしはちょっと奇妙な感じです。リンダがコーラスで頑張っています。

A-3 ラム・オン

ポールがウクレレに乗せて歌うアルバムタイトルソングです。穏やかな曲調ですが、「ぶち壊せ、お前のハートなんかすぐに誰かにくれちまえ」という歌詞はジョン・レノンへの当てつけとされています。
ポールはアルバムにトータル性を持たせるため、タイトル曲を前半と後半の2回登場させる手法を好んでおり、本曲はB面にも登場します。その手法が取られたアルバムとしてビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』が有名ですが、ウイングスの『バンド・オン・ザ・ラン』『ヴィーナス・アンド・マース』でもその手法が用いられています。

A-4 ディア・ボーイ

美しいメロディーの曲で、ポールの弾くピアノが印象的です。そして、多重コーラスのハーモニーが素晴らしい曲です。しかし、歌詞のほうは「君は一体何を見つけたのか自分でわかっているの?」「たいへんな女と関わりをもったものだね」と、オノ・ヨーコと行動を共にするジョン・レノンへ向けた痛烈な批判として騒然となりました。

A-5 アンクル・アルバート~ハルセイ提督

原題は『Uncle Albert/Admiral Halsey』。ポールが得意とする別々の2曲をくっつけて1曲にした作品です。ドリーミーな導入部から次第に盛り上がり、躍動的な後半へ移行する傑作メドレーで、私が大好きな曲です。アメリカでシングルカットされ、ソロとして初の全米1位を獲得しています。

A-6 スマイル・アウェイ

ポールのカウントで始まるハードなロックンロールナンバーです。ポールのヴォーカルはソウルフルで、重量感あふれるナンバーです。当時は何かとマスコミから非難されたポールですが、「Smile away(笑い飛ばせ)」と自分に言い聞かせるように歌っています。日本のみのシングル『出ておいでよ、お嬢さん』のB面曲でもありました。

B-1 故郷のこころ

原題は『Heart of the Country』。ポールらしい、のどかなメロディーラインの曲です。自身の田舎暮らしを歌った曲で、自然への回帰を促しています。イギリスのみのシングル『バック・シート』のB面曲でもありました。

B-2 モンクベリー・ムーン・デライト

ポールの絶叫が耳に響く、ハードなロックチューンの曲です。意味不明の支離滅裂な歌詞で「モンクベリー・ムーン・デライトを吸っていたんだ」は麻薬を連想させます。ポールの不良の側面が出た曲ですが、コーラスにはリンダの他に長女のヘザーが参加しています。

B-3 出ておいでよ、お嬢さん

原題は『Eat at Home』。ポールらしいキャッチ―なメロディーの軽快なポップスで、ポールのヴォーカルはエルヴィス・プレスリー風です。日本では『アナザー・デイ』に続くソロシングル第2作目として発売されヒットしました。

B-4 ロング・ヘアード・レディ

ポールがリンダに捧げた曲で、リンダに対する熱烈な愛情表現が綴られた曲です。リンダはポールと出会った頃からロングヘアーでした。ポールの歌い出しの後、すぐにリンダのソロパートとなり、他の曲とは異なってリンダが重要なヴォーカルパートを担っています。

B-5 ラム・オン

A面にあった同曲のリプライズです。ここでもポールは「ぶち壊せ、お前のハートなんかすぐに誰かにくれちまえ」とジョン・レノンへの当てつけを歌います。そして、メロディーが変わって続けて歌われるのは、のちのウイングスのアルバム『レッド・ローズ・スピードウェイ』のオープニング曲となる『ビッグ・バーン・ベッド』です。『ビッグ・バーン・ベッド』のメロディーに乗せてポールが歌う「あの曲がり角から来るのは誰だい?」はオノ・ヨーコを意味するものと解釈されています。

B-6 バック・シート

原題は『The Back Seat of My Car』。アルバムはスケールの大きな美しいバラード曲で締めくくられますが、歌詞はカーセックスを連想させる際どいものです。イギリスでのみシングルカットされています。

ポール&リンダ・マッカートニー『ラム』はおすすめアルバムです。聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

ポール・マッカートニー&ウイングス『ロンドン・タウン』ほんわかするアルバム

1978年3月31日に発売されたポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム『ロンドン・タウン』を紹介します。原題は『London Town』。

全米ツアーを行なったウイングス黄金期のメンバー5人でレコーディングを開始しましたが、ジミー・マッカロク(ギター)とジョー・イングリッシュ(ドラムス)がアルバム完成前に脱退したため、ジャケット写真はポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、デニー・レインの不動の3人だけになっています。

3人になったウイングスですが、リンダは産休に入った時期でした。事実上、ポールとデニー・レインの二人で完成させたアルバムで、ウイングスのアルバムの中で二人の共作が最も多いアルバムです。楽曲は、ほんわかしたイメージのソフトな作品が多いです。聴いていてハッピーな気持ちになる楽曲が多いアルバムです。

それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 たそがれのロンドン・タウン

原題は『London Town』。アルバムタイトル曲で、ポールとデニーの共作です。叙情的なバラード曲で、ウイングスの美しいコーラスが素晴らしいです。本アルバムから3枚目のシングルカット曲でもありました。

A-2 セーヌのカフェ・テラス

原題は『Cafe on the Left Bank』。1曲目のロンドンから2曲目はパリへ舞台を移します。ロック調のポールの快作で、脱退したジミー・マッカロクのギターの音色が印象的です。

A-3 アイム・キャリング

ポールのセンチメンタルなバラード曲です。シングル『たそがれのロンドン・タウン』のB面曲でもありました。ジョージ・ハリスンが本アルバムで好きな曲として挙げています。

A-4 なつかしの昔よ/カフ・リンクをはずして

原題は『Backwards Traveller/Cuff Link』。二つの曲からなるメドレーで、『なつかしの昔よ』はハーモニー主体の曲で、ポールは荒々しい声で歌っています。続く『カフ・リンクをはずして』は不思議なムードのインストルメンタル曲です。シングル『しあわせの予感』のB面曲でもありました。尚、レコードではメドレーで1曲でしたが、CD化に際して2曲に分割されています。

A-5 チルドレン・チルドレン

ポールとデニーの共作で、ヴォーカルはデニーです。デニーの歌声は繊細で、優しくハッピーな気持ちになれる曲です。フォークソング調の作風を得意とするデニーの個性が遺憾なく発揮された作品です。

A-6 ガールフレンド

ポールがファルセットボイスで歌う、優しい曲です。元々は1974年にポールがジャクソン5のために作った曲で、そのときはリリースされませんでしたが、その後、マイケル・ジャクソンが1979年にリリースしたアルバム『オフ・ザ・ウォール』に収録されました。本アルバムでのポールはマイケルに負けず劣らずの高音ファルセットボイスです。

A-7 別れの時

原題は『I’ve Had Enough』。まさにウイングスとも言うべきロックンロールをポールはエネルギッシュに歌い上げています。本アルバムから2枚目のシングルカット曲でもあります。

B-1 しあわせの予感

原題は『With a Little Luck』。透明感のあるサウンド、心温まるポールのヴォーカル、そしてデニーのコーラスとの掛け合い。私がウイングス最高傑作曲と位置付ける、大好きな曲です。本アルバムからのファーストシングルカット曲でもあり、アメリカで1位を獲得しています。

B-2 伝説のグルーピー

原題は『Famous Groupies』。陰りのあるサウンドの曲で、ポールはくだけた感じのヴォーカルです。ポールとデニーのコーラスワークが光っています。

B-3 子供に光を

原題は『Deliver Your Children』。ポールとデニーの共作で、メインヴォーカルはデニーです。デニーらしいブリティッシュフォーク調の作品です。シングル『別れの時』のB面曲でもありました。

B-4 ネーム・アンド・アドレス

エルヴィス・プレスリーを彷彿とさせるロカビリーナンバーです。はつらつとした魅力的な歌声でポールは歌っています。

B-5 ピンチをぶっ飛ばせ

原題は『Don’t Let It Bring You Down』。ポールとデニーの共作で、叙情的なフォークソング調の曲です。物悲しいメロディーに乗せて「そんなことで、くじけちゃダメだよ」と歌っています。

B-6 モース・ムースとグレイ・グース

原題は『Morse Moose and the Grey Goose』。エネルギッシュなリズムナンバーで、ポールの荒々しい歌声でアルバムはエンディングを迎えます。

ポール・マッカートニー&ウイングス『ロンドン・タウン』はおすすめアルバムです。聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

ポール・マッカートニー&ウイングスの最高傑作『バンド・オン・ザ・ラン』

1973年に発売されたポール・マッカートニー&ウイングスの3作目のアルバム『バンド・オン・ザ・ラン』を紹介します。原題は『Band on the Run』。

ポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、デニー・レインの3人で制作したアルバムです。ビートルズ解散後にポールが作ったアルバムに対する音楽評論家の評価は、それまでは必ずしも高いものではありませんでしたが、本作への評価は非常に高く、本作をウイングスの最高傑作アルバムに挙げる人は多いです。盟友のジョン・レノンも絶賛したアルバムです。

それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 バンド・オン・ザ・ラン

3つのパートから構成される曲で、ポールはこの曲のように別々のメロディーの曲をつなげて1曲にするのが得意です。哀愁漂うスローな導入部から、一転してロック調の中間部へ、そしてパワフルなアコースティックサウンドの後半へと、音楽的な完成度も高い曲です。ウイングス8枚目のシングル曲としてシングルカットもされています。

ライヴでは定番の曲で、1976年の『ウイングス U.S.A.ライヴ』、1990年の『ポール・マッカートニー・ライブ!!』、2002年の『バック・イン・ザ・U.S.』、2009年の『グッド・イヴニング・ニューヨーク・シティ』に収録されています。

A-2 ジェット

一度聴いたら忘れないギターのフレーズを持つ、ヘビーなロックンロールです。ウイングス7枚目のシングル曲としてシングルカットもされています。

こちらもライヴでは定番の曲で、1976年の『ウイングス U.S.A.ライヴ』、1990年の『ポール・マッカートニー・ライブ!!』、2002年の『バック・イン・ザ・U.S.』、2009年の『グッド・イヴニング・ニューヨーク・シティ』に収録されています。

A-3 ブルーバード

ボサノバ風の美しいアコースティックナンバーです。間奏のサックスの音色がとても印象的です。ウイングスのステージで演奏され、ライヴアルバム『ウイングス U.S.A.ライヴ』にも収録されています。ヨーロッパでのみリリースされたシングル『ミセス・ヴァンデビルト』のB面曲でもありました。

A-4 ミセス・ヴァンデビルト

「Ho, heyho!」と躍動的なコーラスにインパクトがある、民族音楽風のリズムナンバーです。ヨーロッパでのみシングルカットされました。2009年のライヴアルバム『グッド・イヴニング・ニューヨーク・シティ』にも収録されています。

A-5 レット・ミー・ロール・イット

荒々しいギターのカッティングが印象的な、豪快なスローバラードです。ポールはヘビーに、ソウルフルに歌っています。本曲は当時仲の悪かったジョン・レノンに和解を呼び掛けたものとして話題になりましたが、ポールはそれを否定しました。但し、ポールはその後「この曲はジョンとやりたかった」とも発言しています。シングル『ジェット』のB面曲でもありました。ライヴでは定番の曲で、1976年の『ウイングス U.S.A.ライヴ』、1993年の『ポール・イズ・ライブ』、2002年の『バック・イン・ザ・U.S.』、2009年の『グッド・イヴニング・ニューヨーク・シティ』に収録されています。

B-1 マムーニア

コーラスが美しく、とても優しいメロディーの明るい曲で、私が大好きな曲です。ポール、リンダ、デニーの声の相性は抜群で、本当に美しいです。

B-2 ノー・ワーズ

ポールとデニーの共作です。前曲から間髪入れずに始まり、ヴォーカルも二人で担当しています。この曲もとても優しい印象の曲で、コーラスワークが本当に爽快です。1979年のウイングスのステージで演奏されてます。

B-3 ピカソの遺言

原題は『Picasso’s Last Words (Drink to Me)』。ポールのピカソに対する追悼歌です。デニーのヴォーカルから始まり、これも3人のコーラスが素晴らしい曲です。めまぐるしく変化するサウンドはポールの真骨頂です。曲中で『ジェット』がリプライズされます。そして最後は『ミセス・ヴァンデビルト』の「Ho, heyho!」で終わります。ウイングスのステージで演奏されており、ライヴアルバム『ウイングス U.S.A.ライヴ』にも収録されています。

B-4 西暦1985年

原題は『Nineteen Hundred And Eighty Five』。実際に出会った魅力的な女性を素材にした曲で、ピアノのメロディーが張りつめた雰囲気を醸し出します。曲の最後に『バンド・オン・ザ・ラン』がリプライズで流れ、トータルアルバムであることを改めて意識させています。日本とアメリカではシングル『バンド・オン・ザ・ラン』のB面曲でもありました。最近のポールのライブでは定番になっており、ポールはいつもウイングスファンのために歌うと言ってから本曲の演奏を開始します。

ポール・マッカートニー&ウイングス『バンド・オン・ザ・ラン』はおすすめアルバムです。聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

ポール・マッカートニー&ウイングス第2作『レッド・ローズ・スピードウェイ』

1973年に発売されたポール・マッカートニー&ウイングスの2作目のアルバム『レッド・ローズ・スピードウェイ』を紹介します。原題は『Red Rose Speedway』。

1971年に発売されたウイングスのファーストアルバム『ウイングス・ワイルド・ライフ』は粗削りな演奏でマスコミから酷評されたアルバムで、セールス的にも今一つでした。デビュー作のアーティスト名は単に「ウイングス」でしたが、レコード会社はウイングスだけでは知名度が低いため、アーティスト名に「ポール・マッカートニー」を加えるように命令します。ポールは仕方なく『ポール・マッカートニー&ウイングス』に変更を行ないました。その甲斐あってか、本作はアメリカのアルバムチャートで1位を獲得しています。

ウイングスはメンバーチェンジが激しいグループでしたが、本アルバムは1971年のウイングス結成時の4人(ポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、デニー・レイン、デニー・シーウェル)にヘンリー・マカロックが加わった5人体制で制作されています。但し、1971年にマッカートニー夫妻が連名で発売したアルバム『ラム』のセッションで録音されていた曲もありました。

それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 ビッグ・バーン・ベッド

1971年のアルバム『ラム』の11曲目『ラム・オン(リプライズ)』の最終部を発展させて完成させた曲です。ファンキーな曲で、荒々しいギターの音色が気持ちいい、私の大好きな曲です。

A-2 マイ・ラヴ

ポールの代表曲の1つで、リンダに捧げたラヴバラードです。本当に美しい曲で、『イエスタデイ』と並ぶ名曲と評価されています。本アルバムから唯一シングルカットされた曲でもあり、アメリカで1位を獲得しています。ポールのコンサートでよく歌われる曲で、ポールは「リンダのために」と言って歌い始めます。

A-3 ゲット・オン・ザ・ライト・シング

『ラム』のセッションで録音された曲です。ポールの快活なラヴソングで、ビートルズを想起させる曲調です。リンダのバックコーラスが耳に残る曲です。

A-4 ワン・モア・キッス

ポールのやさしいメロディーのラヴソングです。アコースティックギターとエレキギターの絡み合う音色が美しい曲です。

A-5 リトル・ラム・ドラゴンフライ

こちらも『ラム』のセッションで録音されていた曲ですが、仕上げはウイングスが行なっています。アコースティックギターの音色が印象に残る曲です。ポールが飼っていた羊の死を悼む曲ですが、「僕等が会うことはもうないだろう」「それでも君を思い慕う」「どうして僕等は誤ってしまったのだろう」といった歌詞は、当時、関係が悪化していた盟友ジョン・レノンに対するメッセージも込められていると言われています。

B-1 シングル・ピジョン

ポール得意のピアノの弾き語りで始まるセンチメンタルな小作品です。ドラマーのデニー・シーウェルがベースを弾き、代わりにデニー・レインがドラムを叩くという「お遊び」をしています。

B-2 ホエン・ザ・ナイト

ポールのヴォーカルとリンダのバックコーラスの掛け合いが印象的な、温かみを感じる曲です。ポールのヴォーカルは後半シャウトに変わります。

B-3 ループ

重々しいイメージのインストルメンタル曲です。ウイングスらしくない作品で、本アルバムではこの曲だけ浮いている感じがします。実験的に取り組んだ作品といった印象です。

B-4 メドレー
1. ホールド・ミー・タイト
2. レイジー・ダイナマイト
3. ハンズ・オブ・ラヴ
4. パワー・カット

ポール得意のメドレーでアルバムが締めくくられます。メドレーで有名なのはビートルズ『アビイロード』のB面メドレーですが、出来の悪い曲をメドレーに組み入れた部分もありました(特にジョン・レノンの曲)。本アルバムのメドレーはそのようなことは無く、どの曲も素晴らしいメロディーです。未完成であった曲をまとめたというのが本当のところでしょうが、曲の展開もスムースで、さすがポールです。

メドレー1曲目の『ホールド・ミー・タイト』はビートルズに同じ名前の曲がありますが、別の曲です。尋ねられたポールは「よく覚えていない」とコメントしていますが、1963年の『ウィズ・ザ・ビートルズ』に収録された同名曲もポールの作品でした。10年前のことは忘れてしまったのですね。

メドレー2曲目の『レイジー・ダイナマイト』はデニー・レインのハーモニカがカントリーっぽい雰囲気を醸し出しています。

メドレー3曲目の『ハンズ・オブ・ラヴ』は曲の最初から最後まで、ポールとリンダがデュエットしている楽し気な曲です。

メドレー4曲目の『パワー・カット』は停電の意味で、ウイングスツアー中に停電があったことにインスパイアされてポールが書いた曲です。

ポール・マッカートニー&ウイングス『レッド・ローズ・スピードウェイ』はおすすめアルバムです。聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

ポール・マッカートニー&ウイングスの名盤『ヴィーナス・アンド・マース』

1975年に発売されたポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム『ヴィーナス・アンド・マース』を紹介します。原題は『Venus And Mars』。

ウイングスはメンバーチェンジが激しいグループでした。本アルバムはポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、デニー・レイン、ジミー・マッカロク、ジェフ・ブリトンの5人体制で制作をスタートしましたが、レコーディング開始後すぐにドラマーのジェフ・ブリトンが脱退したため、後任のドラマーとしてジョー・イングリッシュが急遽加入するドタバタがありました。

本作はポール得意のトータルアルバムです。ビートルズの『サージェントペパーズロンリーハーツクラブバンド』に似た構成で、どの曲も上出来の、ウイングスの名盤の1つです。
『サージェントペパーズ』に似ているところとして以下があります。
・ショー仕立てのアルバムになっている。
・アルバムタイトルが1曲目のタイトルである。
・1曲目と2曲目がつながっている。
・1曲目のリプライズがB面に収録されている。
・曲の終わりと次曲のイントロが重なっているところがある。

本アルバムにはライヴ向けの曲が多いため、1976年発売の『ウイングスUSAライヴ』(Wings Over America)にも多くの曲が収録されました。また、前作『バンド・オン・ザ・ラン』に引き続き、本作もイギリス・アメリカの両方で1位を獲得しています。

それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 ヴィーナス・アンド・マース

ライヴショー仕立てのアルバムの、ショーが始まる前の期待に満ちた静寂が表されているアルバムのテーマソングです。『Venus and Mars』は金星と火星のことですが、「愛と戦争」の意味もあります。ポールはそのような意味があるとは知らずにタイトルを決めており、特別な意味はないと語っています。

A-2 ロック・ショー

前曲からのメドレーで始まるロック曲で、パワフルなサウンドです。未来のロックコンサートで観客はギターを知らない設定になっており、「What that man movin’ cross the stage? It looks a lot like the one used by Jimmy Page」(あの男がステージで振り回しているのは何? ジミー・ペイジが持ってたやつにそっくりだ)という歌詞が出てきます。

A-3 歌に愛をこめて

原題は『Love in Song』。ミステリーな印象を受けるメロディーのバラードをポールが歌い上げています。本アルバムに先行して発売されたシングル『あの娘におせっかい』のB面曲でした。

A-4 幸せのアンサー

原題は『You Gave Me the Answer』。ビートルズの『ホエン・アイム・シックスティー・フォー』や『ハニー・パイ』などの系譜を継ぐ、ノスタルジックなジャズ風の曲です。本アルバムからシングルカットされた『ワインカラーの少女』のB面曲ですが、日本語タイトルは『やさしいアンサー』となっていました。

A-5 磁石屋とチタン男

原題は『Magneto and Titanium Man』。ポールの語りが入るノリのよいリズミカルな曲です。ポールが得意とするストーリーが展開されていく歌詞です。

A-6 ワインカラーの少女

原題は『Letting Go』。シングルでも発売されたヘビーなロック曲で、私の大好きな曲です。ホーンセクションをフューチャーしたブルージーな曲です。脱退前のジェフ・ブリトンがドラムを叩いています。本曲は2017年4月27日のポールの東京ドーム公演で演奏されました。

B-1 ヴィーナス・アンド・マース(リプライズ)

アルバムオープニング曲が歌詞を変えて再登場します。とても美しいメロディーなのに1曲目は1フレーズだけで残念でしたが、リプライズでは2フレーズあるのが嬉しいです。

B-2 遥か昔のエジプト精神

原題は『Spirits of Ancient Egypt』。ポールの作品ですが、ヴォーカルはデニー・レインです。幻想的なメロディーとデニーの か細い声がマッチしています。本アルバムは本曲と次曲がポール以外のヴォーカルですが、これはウイングスがポールのワンマンバンドでは無いことを強調するためでした。

B-3 メディシン・ジャー

ジミー・マッカロクとコリン・アレンの共作で、ヴォーカルもジミー・マッカロクです。コリン・アレンはジミーが以前に在籍していたバンド「ストーン・ザ・クロウズ」のドラマーでした。「薬の瓶」という意味のタイトルですが、麻薬を連想させる歌詞です。実際にジミー・マッカロクはドラッグを多用していた人物で、1979年9月、ヘロインの過剰摂取による心臓発作で26歳の若さで亡くなっています。

B-4 コール・ミー・バック・アゲイン

ポールが50年代ソウルを意識して書いた曲です。ポールの歌声はソウルフルで、ウイングスのメンバーによるバックコーラスもよい雰囲気を出しています。

B-5 あの娘におせっかい

原題は『Listen to What the Man Said』で、直訳すると「あの男の言うことに耳を傾けて!」です。陽気なメロディーに乗せて、ポールらしい率直なラヴメッセージが歌われています。本アルバムに先行して発売されたシングル曲でもあり、アメリカでは1位を獲得しています。アルバム版とシングル版で微妙に違い、アルバム版は冒頭でポールが黒人シンガーの物真似をして喋っており、また、次曲とメドレーでつながっています。シングル版には冒頭のセリフは無く、曲の終わりもフェードアウトです。

B-6 トリート・ハー・ジェントリー~ロンリー・オールド・ピープル

ポール得意の、別々の2曲をくっつけて1曲にした作品です。ゆったりとした落ち着いた曲で、メロディーメーカーのポールがまさに真骨頂を発揮したバラード曲です。

B-7 クロスロードのテーマ

ゆったりとした短いインストルメンタル曲で華やかなアルバムが締めくくられます。このアルバムで唯一のポールによるリードギターが心地よいです。

ポール・マッカートニー&ウイングス『ヴィーナス・アンド・マース』はおすすめアルバムです。聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!

ポール・マッカートニー&ウイングス『スピード・オブ・サウンド』5人のアルバム

1976年に発売されたポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム『スピード・オブ・サウンド』を紹介します。原題は『Wings at the Speed of Sound』。

ウイングスはメンバーチェンジが激しいグループでしたが、本アルバム制作時には不動の3人(ポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、デニー・レイン)にジミー・マッカロク(ギター)とジョー・イングリッシュ(ドラムス)が加わっていました。名盤『ヴィーナス・アンド・マース』、本作、そして全米ツアーを慣行したウイングス黄金期のメンバーです。

全米ツアーを控え、本作はバンドとしての姿を強調するために、ウイングスのアルバムで唯一、5人のメンバー全員がヴォーカルを取ったアルバムになっています。前作『ヴィーナス・アンド・マース』はビートルズの『サージェントペパーズ』のような、いわゆるトータルアルバムでしたが、本作にはポール得意のアルバムのトータル性は感じられません。アルバム全体の流れよりも個々の曲の印象が強いアルバムです。5人の個性を前面に出して、一人一人の認知度を高める戦略だったのでしょう。

それでは、アルバムを紹介していきましょう。(オリジナルがレコード盤なので、A面・B面で紹介します。)

A-1 幸せのノック

原題は『Let’em In』。ヴォーカルはポールです。チャイムの音から始まる、低音が強調された曲です。単調なメロディーですが、ポールの温かさを感じる私の大好きな曲です。歌詞に出てくるBrother Johnはジョン・レノン、Martin Lutherはキング牧師です。アルバムからシングルカットされ、イギリス2位、アメリカ3位のヒットとなりました。コンサートでは本曲でデニー・レインがマーチングドラムを叩きました。『ウイングスUSAライヴ』に収録されています。

A-2 君のいないノート

原題は『The Note You Never Wrote』。ポールが作った曲ですが、ヴォーカルはデニー・レインです。スローバラードの曲で、ジミー・マッカロクのリードギターが感動的です。

A-3 僕のベイビー

原題は『She’s My Baby』。ヴォーカルはポールです。ファンキーな曲調の、おどけた感じの曲です。ポールらしい明るいポップナンバーです。

A-4 愛の証

原題は『Beware My Love』。ヴォーカルはポールです。重厚なロックナンバーで、コンサートでは強烈にシャウトしていました。『ウイングスUSAライヴ』に収録されています。

A-5 ワイノ・ジュンコ

ジミー・マッカロクとコリン・アレンによる作品で、ヴォーカルもジミー・マッカロクです。タイトルは「Wine Junkie」(アルコール中毒者)をもじったもので、実際にジミー・マッカロクはアルコールとドラッグを多用していた人物でした。彼は1977年9月にウイングスを脱退しますが、その2年後の1979年9月、ヘロインの過剰摂取による心臓発作で26歳の若さで亡くなっています。

B-1 心のラヴ・ソング

原題は『Silly Love Songs』。ヴォーカルはポールです。ブラスセクションを大胆にフィーチャーした軽快なラヴソングです。晴れやかな、ポールの代表曲の1つです。本アルバムからのファーストシングルで、イギリス2位、アメリカ1位の大ヒットとなりました。『ウイングスUSAライヴ』にも収録されています。1984年のポールのアルバム『ヤァ!ブロード・ストリート』ではセルフカバーされています。

B-2 クック・オブ・ザ・ハウス

ポールが作った曲で、ヴォーカルはリンダです。曲の前後の料理音は実際にリンダが料理をしているときに録音されました。50年代ロックンロール風の楽しい曲です。

B-3 やすらぎの時

原題は『Time to Hide』。デニー・レインのオリジナル作品で、ヴォーカルもデニーです。彼の曲がウイングスで取り上げられたのは本曲が初めてです。哀愁あるメロディーのミディアムナンバーで私の大好きな曲です。『ウイングスUSAライヴ』にも収録されています。

B-4 マスト・ドゥ・サムシング

ドラマーのジョー・イングリッシュのためにポールが作った曲で、ジョーはウイングスのドラマーとして初めてヴォーカルを取りました。なかなかの美声で、陽気な歌声は魅力的です。残念ながらコンサートでの披露はありませんでした。

B-5 サン・フェリー・アン

ヴォーカルはポールです。アレンジがジャズ風で、ノスタルジックなフルートやホーンの音色が印象的です。

B-6 やさしい気持

原題は『Warm and Beautiful』。ヴォーカルはポールです。アルバムの最後を美しいバラード曲で締めくくっています。ポールらしい優しさに満ち溢れたメロディーに乗せて、ポールはピアノを弾きながら歌っています。

ポール・マッカートニー&ウイングス『スピード・オブ・サウンド』はおすすめアルバムです。聴いたことが無い方は、ぜひ聴いてみてください!